本当に平等・公平な制度・負担とは? 後期高齢者の医療費2割負担を考える

ここ最近、ニュースを見るとたびたび報道されていた「後期高齢者の医療費2割負担」。

年収によって、2割負担となる対象を線引きするというもの。

「だが、はたして年収だけで線引きしていいものなのだろうか。」

ふとしたきっかけで、そのようなことを考えるようになった。

ここでは、”現状の医療費負担の制度”と”医療費2割負担の5案”を振り返りつつ、「年収だけで線引きしていいものか」を考えるようになったきっかけと、考えられる案をいくつか提示しつつ、どのような制度であれば本当に公平なのかを考えてみたい。

後期高齢者の医療費2割負担の5つの案

まず、現状の高齢者の医療費負担体系はどうなっているのだろうか。

厚生労働省のサイトを見ると、次のような形だ。

  • 75歳以上:1割負担
  • 70~74歳:2割負担
  • 69歳以下:3割負担

※現役並みの所得者は、3割負担

今回の「後期高齢者の医療費2割負担」は、現状1割負担である75歳以上のうち、「いくらの年収の層から2割負担にするか?」ということが検討されている。

厚生労働省が提案するのは、次の5つの案だ。

(2割負担対象の5案)

年収対象(75歳以上のうち)現役世代の負担
240万円以上13%(約200万人)年間 470億円 減
220万円以上18%(約285万人)年間 670億円 減
200万円以上23%(約370万人)年間 880億円 減
170万円以上31%(約520万人)年間 1,220億円 減
155万円以上37%(約605万人)年間 1,430億円 減

(参考:後期高齢者の医療費 2割負担対象の“所得線引き” 5案を提示

年収で線引きするのは、はたして妥当なのか?

「本当に妥当な線引きは、どのようなものだろうか?」

そのことを考えるきっかけとなったのは、2020年12月03日に放送されたWBS。

その放送の中で、WBS解説キャスターの山川龍雄さんは、番組内で次のように語った。

疑問に思っているのは、年収制限だけで線引きをしていいのかということなんですよ。
歳を取れば取るほど、生活が豊かかどうかというのは、その年の年収よりも資産で決まるんですよ。
240万円以上の年収がある人でも、資産が0の人は(2割負担は)厳しい。
一方で155万円以下の人でも1億も2億も資産を持っている人は2割負担はそこまで厳しくない。

「ただし、資産の把握は難しいですよね…」というアナウンサーの発言に対しては

ひとつの私の提案としては、原則まず全員2割負担という形にしておいて、1割にしたい方は役所の窓口で申請する。
その中で、年収と資産を合わせてチェックして「自分は生活が厳しいんだ」ということを証明する。

75歳にもなると、体のあちこちにガタがくる。

そんな状態でも生活費のために働く人の負担額が2割になる一方で、収入はないが資産を十分に確保できている人の負担額が1割となる。

どこか不平等のようなものを感じざるを得ない。

年収・資産以外に考慮すべきことはないのか?

はたして、年収や資産以外に考慮すべき項目はないのだろうか?

たとえば、病気の有無でも生活への負担は大きく変わってくる。

たとえ年収・資産が同じであっても、持病で毎月通院が必要で医療費がかさむ人とそうでない人とでは、家計に対する負担も当然異なる。

また、累進課税制度の逆バージョンで、かかった医療費が大きくなればなるほど負担の割合を減らすといったことも一案ではないだろうか。

さらに、高額療養費制度との兼ね合いもある。

70歳以上の年収156~約370万円の人では、医療費のひと月の上限額は57,600円(H29年7月診療分までは44,400円)。

参考:高額療養費制度を利用される皆さまへ

年収156万円なら、月の収入は単純に考えて13万円。所得税(5%)や住民税(10%)を差し引くと、手取りは大体11万円。

医療費が上限額いっぱいに到達してしまうと、残りは5万円ちょっと。これでは生活すら成り立たない。

逆に年収370万円なら、月の収入は30万円ほど。医療費が上限額いっぱいに達したとしても生活に大きな支障は生じないだろう。

それならば、今回の医療費2割負担の対象を年収155万円以上として、高額療養費の上限額をさらに細分化。年収156万円~236万円までは、上限額を57,600円より少なくする、などしたほうが、国民皆保険の趣旨に合っているような気がする。

 

今回、2割負担の対象が年収200万円以上の人となったが、はたして”公平な負担”といえるのだろうか。どのような制度であれば、本当に平等な制度だといえるのだろうか。

「年収200万円以上」で合意 高齢者医療費2割負担―自公党首、歩み寄る

また、2割負担にしたことで、現役世代の負担がどれほど軽くなるのかも見ておくべきだろう。

年収200万円以上を対象とすることで、現役世代の負担額は、

  • 年間880億円減

とされている。

ここでは、現役世代を15〜64歳として、1人あたりどれほど負担額が減ることになるのかを考えたい。

日本の人口と現役世代の人口と比率は、「統計局ホームページ」の“人口推計(2019年(令和元年)10月1日現在)”で確認すると

  • 日本の総人口:1億2616万7千人
  • 15歳~64歳人口:7507万2千人(59.5%)

となっている。

ここから、1人あたりのおおよその負担額を計算すると

  • 880億 ÷ 7500万 = 年間 約1173円

ざっくり考えて、ひと月で100円ほどの負担減少

医療費、遠い世代格差解消 75歳以上負担増も効果薄く(日本経済新聞)

これで”現役世代の負担減”を謳われても、「なんだかなあ…」という思いしか湧いてこない。