「アイシールド21」は、2002年から2009年にかけて、週刊少年ジャンプにて連載されていたアメフト漫画。
主人公の”小早川瀬那(セナ)”は、体は小柄で貧弱。気も弱いが足だけは速く、普段は不良のパシリとしてこき使われていた。
しかし、そんなセナが、ひょんなことから泥門高校のアメフト部に入部してしまうところから物語は始まっていく。
ここでは、その「アイシールド21」の魅力や特徴と、心に残った言葉やエピソードを紹介します。
「アイシールド21」の魅力
ルールなどをまったく知らなくても、アメフトの魅力が伝わるように配慮されている
アメフトは、野球やサッカーなどと比べると、どうしてもマイナーなスポーツです。
本場アメリカでもないので、地上波のテレビで見る機会なんてまったくない。
日本人のほとんどが、アメフトのルールを知らないことだと思います。私もその一人でした。
しかし、この「アイシールド21」は、アメフトをまったく知らなくても読めるように配慮されています。
試合前や試合中に、必要なルールを随時説明されているので、「なにが起きているのかわからない」といった心配もありません。
また、使用される戦略・戦術もその都度解説されているのも大きな特徴です。
そのため、アメフトの魅力である”パワー”、”スピード”、”タクティクス”の3要素が、私たち素人にも伝わる構成になっています。
それぞれのキャラクターが挫折や葛藤から立ち上がる姿に心が打たれる
出てくるキャラクターひとりひとりにドラマがあるのも、この「アイシールド21」の特徴のひとつです。
「アイシールド21」の中では、「ダレル・ロイヤルの手紙」という文章が紹介されている。
フィールドでプレーする誰もが必ず一度や二度屈辱を味わわされるだろう
打ちのめされたことがない選手など存在しない
ただ一流の選手はあらゆる努力を払い速やかに立ち上がろうとする
並の選手は少しばかり立ち上がるのが遅い
そして敗者はいつまでもグラウンドに横たわったままである(引用:アイシールド21 3巻)
アイシールド21では、この手紙に書かれている”一流の選手”も”並の選手”も、そして”敗者”も出てくる。
- 幼い頃から思い描いていた夢を諦め、アメフトで新たな夢を追い求める者
- 常に天才の弟と比較されながらも、寡黙に鍛錬を重ねる者
- 自分と他の部員とのアメフトに対する熱量の差に嘆き、もがく者
どの選手も人間味があり、魅力的に描かれている。
そのため、感情移入がしやすく、心が動かされる描写が随所にあらわれてくる。
アメフトにすべてを捧げ、ひたむきに努力を重ねる選手たち。
その姿を見ると、大人になって忘れていた”胸の中の熱いもの”を蘇らせてくれる。
※手紙の全文は、ダレル・ロイヤルの手紙 – アニヲタWiki(仮)にて確認できるので、興味がある方は、ぜひ!
印象に残っているキャラクター・言葉・エピソード
凡人に生まれた男はどうしたらいいんだ…!!
個人的に”裏の主人公”と思っているキャラクターが、いまから紹介する”桜庭春人”。
泥門高校のライバル校である王城大学附属高校に入学した彼は、元来スポーツ好きであったため、名門アメフト部に入部する。
初めは、背が高いこともあり、期待されていたが、同学年の進がメキメキと頭角を表していき、高校屈指の選手となっていく。
広がっていく進との実力の差を目の当たりにし、言葉にならない思いをぶつける。
諦めきれないんだよ!
俺だって一流になりたい!
凡人に生まれた男は
どうしたらいいんだ…!!(引用:アイシールド21 11巻)
心の中に、いつも葛藤を抱えながら戦ってきた彼の言葉は、読む人の目頭を熱くする。
そして、何度でも立ち上がり、折れそうな心を奮い立たせ、諦めない姿を見せる桜庭。
アメフト部の監督は、次の言葉で彼を称賛する。
だが 桜庭だけが 一人
ずっと進を追い続けている
反吐を吐きながら
苦しみながら
自分でも抜けぬことなど分かっているのに…!
むしろ奴は
王城で最も強い心 ー
折りたくとも 折れぬ 己の野心
強いからこそ もがくのだ…!!(引用:アイシールド21 24巻)
周囲からは”精神的に弱い”と思われてきた桜庭。
そんな彼に対する監督の評価は、180度異なるものだった。
”本当の心の強さとはなにか?”ということを考えさせられる言葉だ。
『小市民達はいつも挑戦者を笑う』
主人公のセナたち泥門高校と、日本屈指のラインを誇る太陽スフィンクスとの1戦。
泥門のラインマンは、屈強な太陽ラインマンとの組み合いで敵わず、何度も青天させられる。
それは、屈辱を味わわされ、意気消沈しているラインマン達に向けた言葉だった。
『小市民達はいつも挑戦者を笑う』
周りの嘲笑を振り切ってアメリカに挑戦
見事成功した偉大な選手の言葉だ(引用:アイシールド21 5巻)
何がいいって、この言葉を言ったのが、”ヒル魔”だってところ。
知略をめぐらし策を練り、ときにはハッタリをかまし、相手を翻弄するヒル魔。
そんな彼が、珍しくまじめな顔でラインマン達を励ます姿に、「ついていきたい!」と思える魅力的なシーン。
向いてなかったからできなかったんじゃない
泥門デビルバッツの一員の”雪光学”。
彼は、典型的なガリ勉タイプで、生きてきて17年間、机にかじりついて勉強をしてきた。
スポーツに興味があったけど、運動神経が悪く、”自分には向いてない”と諦め、本格的にスポーツをすることがなかった。
そんな彼だったが、高校最後の思い出に、一度でいいからやりたいことに挑戦したいとの思いを持ち、アメフト部に入部する。
そりゃ僕に才能なんてない
でも この17年間 僕は ー
向いてなかったからできなかったんじゃない
何もしや しなかったんだ
ずっとスポーツがしたかったくせに
無理だとか向いてないとか
結局 何もしなかった
何もしなかったから
何もできなかった…!!
でも 今年だけは
違うんだ…!!(引用:アイシールド21 21巻)
身体能力のなさに直面しつつも、持ち前の勤勉さで練習に励む。
そして、タッチダウンを決める彼の姿は、とても泥臭いけど人間らしく、輝いてみえる。
挑戦することの意味を、彼の姿から感じることができる印象的なシーン。
あるもんで最強の闘い方探ってくんだよ
悪魔的頭脳を持つ”ヒル魔”
そんな彼が、生まれつき才能があふれる”金剛阿含”とタッグを組んだときだった。
阿含は、ヒル魔に「お前に身体能力があれば」ともらす。
そのとき、ヒル魔は次の言葉を返した。
…
ないものねだりしてるほどヒマじゃねぇ
あるもんで最強の闘い方探ってくんだよ
一生な(引用:アイシールド21 37巻)
いまの時代こそ、この「自分の持っているもので最善を探す」ということが求められているように感じる。
”会社から個人へ”の流れが進んでいる現代において、「自分には何ができるのか?」と常に考える姿勢の有無こそが、これからの社会を生きていく上での鍵になっていくのだと思う。
マンガだけど、リアルに近い挫折や葛藤が鮮明に描かれている
「アイシールド21」の何が魅力かというと、”リアルに近い挫折や葛藤が鮮明に描かれている”点、そして、”挫折から立ち上がる姿”が魅力的に描かれている点にあると思います。
各キャラクターが抱えている挫折や葛藤を、それぞれのキャラクターなりの方法で解消しようと挑戦する姿を見ると、熱くなれる、勇気をもらえる。
私にとって、「アイシールド21」は、そういった熱量を持つ、心動かされる漫画です。